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2025年10月29日

運転日報の保存期間とは?法的基準から効率的な管理法、システム導入まで徹底解説

運転日報の保存期間とは?法的基準から効率的な管理法、システム導入まで徹底解説

運送業や旅客業、または一定以上の営業車を保有している企業などは、運転日報の作成が法律で義務付けられています。さらに、作成するだけでなく、一定期間保存する必要があります。運転日報の作成や保存を怠ると、最悪の場合罰則につながるため法的な要件について正しく理解することが重要です。 この記事では、運転日報の保存期間や運用のポイントについて解説します。運転日報の業務への活かし方や電子化によるメリットについても解説しますので、ぜひ参考にしてください。

目次

運転日報とは?基本と役割をおさらい

まずは運転日報の概要や役割、運転日報の記録が必要な業種について解説します。

運転日報の定義と目的

運転日報とは、業務で車を運転した場合に、運行時間・距離・ドライバー情報・アルコールチェック結果などを記録する帳票のことです。ドライバーの勤務実態や車両の使用状況を把握し、安全運転の徹底と労務トラブル防止に活用されます。

運転日報は、法令で作成が義務付けられており、「道路交通法施行規則」と「貨物自動車運送事業輸送安全規則」において、以下のように定められています。

【道路交通法施行規則】

「運転者名、運転の開始及び終了の日時、運転した距離その他自動車の運転の状況を把握するため必要な事項を記録する日誌を備え付け、運転を終了した運転者に記録させること。」

出典:e-Gov法令検索「道路交通法施行規則」

【貨物自動車運送事業輸送安全規則】
「貨物自動車運送事業者(貨物軽自動車運送事業者にあっては、四輪以上の軽自動車を使用して貨物を運送する事業者に限る。以下この条及び第十条第二項において同じ。)は、事業用自動車に係る運転者等の業務について、当該業務を行った運転者等ごとに次に掲げる事項を記録させ、かつ、その記録を一年間保存しなければならない。」

出典:e-Gov法令検索「貨物自動車運送事業輸送安全規則」

運転日報が必要となる業種

運転日報は、緑ナンバーの自動車を保有している企業や一定台数の白ナンバーの自動車を保有している企業に作成が義務づけられています。

緑ナンバーとは、タクシーやバス、配送トラックなど人や物を運ぶことで利益を得る事業用の自動車に装着されるナンバーです。一方、一般企業の営業車などは、白ナンバーと呼ばれます。

運転日報の作成が必要な業種や作成の目的は、下記の通りです。

業種作成の目的
運送業トラックの運行管理・法定義務対応
旅客業配送タクシー・バスなど旅客輸送の運行記録管理
その他一般企業営業車両の利用状況記録(白ナンバー対応)

運転日報の保存期間とは?【法律別・業種別に解説】

運転日報は作成して終わりではなく、一定期間保存する必要があります。ここでは、運転日報の保存期間について、法律別・業種別に解説します。

法律で定められた保存期間の基本

まずは、法律で定められた保存期間について解説します。

貨物自動車運送事業輸送安全規則の保存義務

緑ナンバーの自動車に適用される、「貨物自動車運送事業輸送安全規則」では、1年間の保存義務が定められています。

また、道路交通法では、運転日報の保存期間について明確な定めはありませんが、アルコールチェック記録の保存期間が最低1年間であるため、アルコールチェックの内容と運転日報を併せて管理している場合は、1年間の保存が必要となります。

労働基準法第109条に基づく保存義務

書類の保存については、労働基準法でも定められており、労働基準法第109条では、以下のように記載があります。

「使用者は、労働者名簿、賃金台帳及び雇入れ、解雇、災害補償、賃金その他労働関係に関する重要な書類を五年間保存しなければならない。」

出典:e-Gov法令検索「労働基準法」

運転日報については明記されていませんが、業務に関わる書類であるため、労働基準法に基づき、5年間保存しておくと安心でしょう。

業種別・車両別の保存期間の違い

次に業種別・車両別の保存期間について解説します。

業種・車両保存期間の目安
タクシー・バスなど旅客業1〜3年
トラックなど貨物運送業1年
白ナンバー車両を使う営業車(社用車)5年

タクシー・バスなど旅客業

タクシーやバスなどの旅客業の場合は、「旅客自動車運送事業運輸規則」に準じて記録・保存する義務があります。業務記録については、「旅客自動車運送事業運輸規則」の25条で下記の通り定められています。

「一般乗合旅客自動車運送事業者及び特定旅客自動車運送事業者は、運転者等が事業用自動車の運行の業務に従事したときは、次に掲げる事項を運転者等ごとに記録させ、かつ、その記録を一年間保存しなければならない。」

出典:e-Gov法令検索「「旅客自動車運送事業運輸規則」

また、旅客自動車運送事業運輸規則25条には、下記の事項も記載されています。

「一般貸切旅客自動車運送事業者は、運転者等が事業用自動車の運行の業務に従事したときは、前項各号に掲げる事項のほか、旅客が乗車した区間を運転者等ごとに記録させ、かつ、その記録を三年間保存しなければならない。」

出典:e-Gov法令検索「旅客自動車運送事業運輸規則」

タクシー・バスなど旅客業で、運転日報に旅客が乗車した区間を運転者等ごとに記録する運用であれば、3年間保存する必要があるでしょう。

 

トラックなど貨物運送業

トラックなどの貨物運送業は「貨物自動車運送事業輸送安全規則」に基づいた運用が求められるため、最低1年間の保存義務と考えるとよいでしょう。

白ナンバー車両を使う営業車(社用車)

白ナンバーの営業車を使う企業の場合は、労働基準法に基づき5年間の記録が望ましいでしょう。

法令違反時のリスクと監査対応

「貨物自動車運送事業輸送安全規則」や「道路交通法施行規則」において、運転日報の作成や保存を怠った場合の直接的な罰則は定められていません。しかし、運転日報に関する業務は、緑ナンバーの場合は「運行管理者」、白ナンバーの場合は「安全管理者」の業務の1つです。

運転日報の作成・保存を怠った場合、運転管理者・安全管理者の業務を怠ったとみなされ、是正措置などが行われる可能性があります。これらの措置や指導にもかかわらず状況が改善されない場合は、罰則の対象となる可能性もあるため、注意が必要です。運転日報に関する罰則ではありませんが、運転日報の不備や管理について調査する中で運行管理者や安全管理者が選定されていないことが発覚した場合は、以下のような罰則が科されます。

 

  • 運行管理者の選任義務違反の場合・・・100万円以下の罰金
  • 安全運転管理者の選任義務違反の場合・・・50万円以下の罰金

運転日報の保存運用の実務ポイントと注意点

運転日報を作成・保存する上では、まず必要な記載項目を押さえることが重要です。また、保存方法についても紙媒体で行うか、電子媒体で行うか決める必要があります。

ここでは、運転日報の保存運用の実務ポイントと注意点について解説します。

保存に必要な記載項目一覧

運転日報に必要な記載項目は、緑ナンバーか白ナンバーかで異なります。緑ナンバーの場合、「貨物自動車運送事業輸送安全規則」に記載の下記項目は必ず記載しましょう。

  1. 運転者の氏名
  2. 運転者等が従事した運行の業務に係る事業用自動車の自動車登録番号又は車両番号その他の当該事業用自動車を識別できる表示
  3. 業務の開始及び終了の地点及び日時並びに主な経過地点及び業務に従事した距離
  4. 業務を交替した場合にあっては、その地点及び日時
  5. 休憩又は睡眠をした場合にあっては、その地点及び日時
  6. 両総重量が八トン以上又は最大積載量が五トン以上の普通自動車である事業用自動車の運行の業務に従事した場合にあっては、貨物の積載状況

出典:e-Gov法令検索「貨物自動車運送事業輸送安全規則」

その他、下記のような場合には、詳細の記載が必要です。

  • 荷主の都合により集貨又は配達を行った地点で待機した場合
  • 集貨地点等で、当該貨物自動車運送事業者が荷役作業又は附帯業務を実施した場合
  • 道路交通法に規定する交通事故若しくは自動車事故報告規則に規定する事故、または著しい運行の遅延その他の異常な状態が発生した場合等

例えば、「荷主の都合により集貨又は配達を行った地点で待機した場合」は、「集貨地点や到着日時」「積込み又は取卸しの開始及び終了の日時」「附帯業務の開始及び終了の日時」「集貨地点等から出発した日時」などが必要となります。

一方、白ナンバーの場合は、「道路交通法施行規則」に記載されている下記の内容が必要な記載項目となります。

  1. 運転者名
  2. 運転の開始及び終了の日時
  3. 運転した距離
  4. その他自動車の運転の状況を把握するため必要な事項

出典:e-Gov法令検索「道路交通法施行規則」

「その他運転の状況を把握するため必要な事項」については、例えば休憩や仮眠を取った場合は、場所や時間を記録するなどが挙げられます。

保存方法別の注意点

運転日報の保存方法については、主に紙媒体で保存する方法と電子媒体で保存する方法があります。保存方法別の注意点について解説します。

紙媒体の場合の注意点

紙で保存する場合は、紙の運転日報を保管するスペースが必要になります。例えば、ドライバーが30人で平均稼働日数が20日だった場合、1年間で7,200枚となります。運転日報の保存期間は、労働基準法に基づくと最大5年間であるため、対象者が多い場合は、書類の場所の管理だけでも負担になるでしょう。また、紙の場合、紛失や破損のリスクがあったり、共有や検索が難しかったりするなどの課題もあります。

一方で、紙で運転日報を保存・運用することで、パソコン操作が不慣れな方でも抵抗なく記載でき、システムなどの導入も必要ないため導入のハードルが低いといえるでしょう。

電子媒体の場合の注意点

電子媒体で管理する場合は、運転日報を記録・保管するためのソフトやシステムが必要となるため、導入のコストがかかります。また、パソコン操作に慣れていない方が多い職場の場合、使い方についての教育が必要となるでしょう。また、ネット環境がない場合は、ネット環境を整備する必要があります。

一方で、電子媒体で保存する場合、紙の場合必須である保管スペースが不要です。また、必要な書類を簡単に検索でき、共有も紙に比べて容易にできます。バックアップをとっておけば紛失のリスクや破損のリスクもほとんどないため、メリットも多いといえます。

電子化のメリットについては、後ほど詳しく紹介します。

アルコールチェックの保存義務と関連記録の扱い

2022年4月の道路交通法の改正に伴い、一定台数以上の自動車を保有している白ナンバー事業者に対してもアルコールチェックが義務化されました。さらに、2023年12月より、アルコールチェッカーを用いたチェックが義務化されています。アルコールチェックの確認内容については、1年間の保存義務があり、下記項目を記録する必要があります。

  1. 確認者氏名(原則として安全運転管理者又は副安全運転管理者) 
  2. 運転者氏名 
  3. 自動車のナンバー等(連番 5567 等でよい)
  4. 確認の日時 
  5. 確認の方法 ・ アルコール検知器の使用の有無(令和4年10月1日から) ・ 対面でない場合は具体的確認方法 
  6. 酒気帯びの有無(検査機器で示された数値だけでもよい)
  7. 指示事項(酒気帯び有りの場合などにどのような措置を取ったのかを記録する)
  8. その他必要な事項

出典:一般社団法人千葉県安全運転管理協会「アルコールチェックの義務化と記録について」

運転日報の記録・保存と併せて、アルコールチェックの内容についての記録・保存についても対応が必要です。

運転日報を業務改善に活用するための実践ポイント

運転日報の記録・保存は法的な義務ではありますが、運転日報を業務改善に活用することも可能です。運転日報を業務改善に活用するためのポイントについて解説します。

安全運転・事故防止の記録として活用

運転日報の記録内容は、安全運転や事故防止につながります。例えば、過去のヒヤリハットや走行ルート上の危険箇所を分析することで、社員への交通安全教育や走行ルートの見直しなどの対策を取ることができます。また、ドライバーが運転日報を日々記録することで、運転への意識が高まり、安全運転や事故防止の意識が高まるでしょう。

ドライバー評価・教育に活かす

運転日報からドライバーの運転の状況や業務効率を分析し、ドライバーを評価したり、教育したりすることもできます。例えば、燃費効率が他のドライバーに比べて悪いドライバーがいれば、適切に指導・教育を行うことで改善が見込めます。

業務効率の改善・稼働分析

運転日報を分析することで、業務効率の改善や社員の稼働状況の改善につながります。

例えば、走行距離とかかった時間を分析することで、走行ルートの見直しによる業務効率化を図ることができます。また、ドライバーごとの運転時間や走行距離を確認することで、長時間運転が続いているドライバーに休息をとらせることができるだけでなく、そもそも無理な運行計画になっていないかなど、根本の見直しにもつながります。

その他、車両の点検項目を運転日報に入れることで、車両異常の早期発見にもつながります。

運転日報の電子化による業務効率化

運転日報を電子化することで、さまざまな面で業務効率化につながります。ここでは、紙ベースの運用の限界や課題と電子化によるメリットについて詳しく解説します。

紙ベース運用の限界と課題

紙による運転日報の記録・保存は導入が容易ではありますが、下記のように課題も多くあります。

 

  • 書類を紛失するリスクがある
  • 記入ミスや記録の抜け漏れが発生する
  • 確認・集計業務の負担が重い
  • 多拠点での保管・共有が困難
  • 保管スペースの確保が必要

 

これらの課題は、管理者だけでなく、ドライバーにとっても影響するため、電子化などの対策を行っていく必要があるでしょう。

電子化による主なメリット

紙ベースでの運用の課題を解決するのが、運転日報の電子化です。運転日報の電子化による主なメリットについて解説します。

検索・共有性の向上

電子化することで、検索・共有性が向上します。紙のデータの場合、目的の日報を探したい場合に、日報を1枚1枚確認する必要がありますが、電子データであれば、キーワードで検索することで簡単に該当の日報を見つけることができます。

また、他拠点と共有したい場合、紙の場合は郵送や直接手渡しするなどの手間がかかりますが、電子データであればメールやシステム上ですぐに共有できます。

改ざん防止・セキュリティ向上

電子化し、電子データで保存することでセキュリティの向上にもつながります。電子データであれば、誰がいつ編集したか履歴を残すことができます。編集ログを確認できるため、改ざん防止にもつながります。

遠隔管理・クラウド対応による利便性

アプリなどを導入すれば、出先からも運転日報の入力や確認が可能です。手書きによって生じていた「ドライバーの字が読めない・誤字脱字が多い」「あとから思い出して書くので、記入に時間がかかる・内容が不正確」といった問題も電子化によって解消できます。

システム導入による業務の変化

電子化システムを導入し、電子化を行うことで、ドライバーも管理者も業務フローを効率化できます。

例えば、ドライバーは時間や場所に縛られず、空いた時間にアプリやシステムから運転日報を記入できます。紙の場合は、内容に抜け漏れがないか目視で確認する必要がありますが、電子化した場合はアラートで表示されるなどの機能も利用できます。

また、管理する側も紙のように、回収してファイリングするといった作業が不要となります。さらに、紙で保管している必要がなくなるため、保管スペースの削減につながります。

システムによっては走行ルートを自動で記録したり、重要な事項についてアラートで知らせたりするなど、さらなる効率化を図ることができます。

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運転日報の保存期間を正しく理解しよう

運転日報は、記録すべき内容や保存期間をしっかりと押さえた上で、いかに効率的に管理していくかが重要です。運転日報の電子化を行うことは、ドライバーにとっても管理者にとっても業務効率化につながります。

また、運転日報をうまく活用することで業務改善にもつながります。運転日報のデータをもとにした走行ルートの見直しや交通教育など、データを分析し、適切に活用することが大切です。

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